ROLEX AIR-KING 116900 40mm
パンデミックの影響が腕時計にも及んだ。国策で金余りが生じ全世界で腕時計の高騰を引き起こす。
私と言えば2018年に購入したスピードマスターを大変気に入っており、しばらくは腕時計の購入予定はないと思っていた。次に買うのはロレックスのデイトナと決めており正規店を皆に倣って訪問するも在庫確認をされたことすら無いので、小金を貯めていつかセカンドマーケットで買うんだろうな、くらいに思っていたのだが、欲をかいて失敗する良い例ができたので、ここに記録しておく。
2021年末、このブログでも紹介したがLVMH傘下となったニューヨークのシルバーメーカー ティファニーから特別なパテック・フィリップのノーチラスが生まれた。当然私のような、そして私の周りにいるような一会社員には到底手に入れること敵わぬ品だという事は理解しているので、それが欲しいとかそういう話ではない。時を同じくして、それまでも人気モデルでプレミアム価格で売買されていたオイスターパーペチュアル、そうロレックスのエントリー機の新しいオイスターパーペチュアルのターコイズカラーを同僚が中野ブロードウェイで購入していたのだが、ティファニーブルーのノーチラスの情報が世界を駆け巡ると、不思議とオイスターパーペチュアルまでもが値を上げることになった。定価70万円ほどの腕時計を中古で180万円も出して購入するのは頭のネジが外れているようだと時計愛好家でなければ思うに違いないが、その後400万円ちかくまで高騰し1か月ほど使って200万円もの利益を生み出したのだから大したものだ。ロレックスを転売目的で正規店を回る行為がSNSでも溢れかえっているが、中古でも儲かるのだから興味のあるものはやってみると良い。嘘みたいな話だが、この時期から熱狂的な投機が起こる火種ができていたという事になる。
熱気に当てられた、と今の私は思い返すのだが、当時の私は冷静さを欠いていたのだろう。彼のオイスターパーペチュアルを横目に私はこっそりエアキングを中野ブロードウェイで購入したのだ。次はデイトナだ、デイトナまでは何も買わない、そんな決意も空しく、似合いもしない40mmの腕時計を手に入れたところまでは良かった。年が明けロレックスの高騰は続いていた。2月になり新作発表まであと1ヶ月、私のエアキングも購入時の1.5倍ちかくまで値を上げていたものだから、オンラインサイトを見ながら私も得意げだったに違いない。間の抜けた顔をしていたのだろう。
どうしてこのモデルを選択したのかと言えば、小さな理由がある。きっと値を上げるはずと言う、薄っぺらい予想と期待が私にはあったのだ。お小遣い制の私の財力では100万円くらいが上限で、候補が2つしか無かったのだが、どちらも理由は同じである。モデルチェンジをしていないエアキングとミルガウスだ。条件が良いのがたまたまあったのがエアキングで、年明けには値を上げるだろうと踏んで急いで購入した。どちらも大して好きなモデルではなかったので、少し上がったらロレックスの生産終了後の値動きを記事にしてから売却するにはちょうど良かった。購入理由としては最悪なものだから、こうして痛い目を見る。
2022年2月下旬、起こらないはずの戦争が起きた。見る見るうちに腕時計の相場が崩れていった。あっという間に購入価格ほどまで下落する。更に予想外だったのは後継モデルがそのままのデザインで発表されたことだ。エアキングの文字盤はブラッドハウンドSSCのコックピット内のクロノグラフとスピードメーターのデザインを踏襲している。スポンサー契約が切れたため現在はブラッドハウンドSSCとは無関係となり、次のエアキングではこのデザインは使わない、そう思っていた。だから、ロレックスの発表には落胆をした。
だってそうだろう、同じデザインなら新しくスペックの高い方が良いに決まっている。おそらくミルガウスもモデルチェンジするのだろうが、デザインは同じになるのではないだろうか。いや、そうであってほしい、と私の中の悪い部分が言っている。新作発表後も私のエアキングの相場は上がることが無かった。
コロナと戦争と後継機のデザインの影響で私のエアキングは買った価格より相場が下になった。少しばかりの知識では、かえって大失敗をする良い例だろう。しかし手放さなければマイナスじゃない理論で、含み損の存在を頭から打ち消し、今でもたまに私の左腕を疲れさせてくれるこのエアキング。こいつには非は無い。ただただ重く分厚く夜光の少ない武骨で野暮ったいだけの腕時計だ。
奇しくも私の時計人生のスタートはロレックスのエアキングだった。また私の元へエアキングが帰ってきたのだ。そう思えば少しは可愛がれるかと左手を見ても、まったく愛着は湧かない。1年近くが経ち、ロレックスの正規店では入店事前抽選システムが広がってきた。私も申し込み、もしこのエアキングの代わりが見つかれば、すぐにでも売却するのだろうと思う。エクスプローラーかサブマリーナーのデイト無しと交換できたらと毎週申し込むのだが一向に当選しないのは、きっとエアキングが私を引き留めているのかも知れない。


















#ZENMAIのココ東京
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