【エピソード16】真のパネライ好きならば手巻きだろと言われて買った ルミノールマリーナ PAM00115
突然興味が薄れる。長いこと趣味を続けているとそんなタイミングがしばしば誰にでも起こるだろう。他に夢中になるものに出会ったり仕事や家庭が多忙となり時間が取れなくなったりすることも要因の一つになるかも知れない。
2009年だったか2010年だったか、私は息子のバースイヤーウォッチのみを残し手元の腕時計の一切を処分した。当時はリーマンショックの影響で査定額は散々だったがあまり気にはならなかった。価格を思い出すとアクアノートが55万円、パネライのサブマーシブルが30万円、パワーリザーブが35万円だったと思う。今思えばアクアノートは残しておいても良かったなと思うが、当時はデカ厚ブームだったしほとんど着けていなかったので仕方がない。
更に好きだった(心奪われていたと言っても過言ではない)オーチマチックのパネライ2本も手放したのは、ルミノールベース所有の後輩の「呪い」の言葉の影響もある。「手巻きのパネライを知らずに・・・」と、真のパネリスティ(パネライ愛好家)を口にする上で未体験では許されないような戒めのような言葉だ。結果的に「ヒストリカルコレクション」に狙いを絞り、私は新たなパネライを迎い入れることとなった。
2010年、中野ブロードウェイの時計ショップれんずでPAM00115を購入した。価格は40万円と少しだったと思う。普通にルミノールマリーナを買っても面白くないので左利き用のモノを探していたのだ。個人的にはベースより秒針があるマリーナの方が好きだったこと、どうせ買うならちょっと人とは違うものが欲しかったので、このレフトハンドのルミノールマリーナはちょうど良かった。
念願の手巻きモデルを手に入れ私は満足だった。私が購入した頃にはたしかルミノールマリーナのレフティーはカタログ落ちしていたと思う。2本のパネライで経験済みだったがリューズガードが大きく地に手を付く動作をするとガードが手の甲に当たるのだが、レフトハンドはそれがない。小さいことだがストレスが無いことは良いことだ。重要な手巻きはどうだったか?と聞かれれば、自動巻きの方が便利ではあった。ただ毎日使う前に巻くというルーティンが時計好きには堪らないし、やはり真のパネライ愛好家は手巻きモデルを1本は買って使てみるべきだと思った。スワンネック緩急針で有名なユニタス6497/2ベースの第4世代手巻きムーブメントはシースルーバックから覗けた。
このルミノールマリーナは2018年まで使った。次第にだがパネライについて思うことがあった。パネライは不思議な時計で着けてる満足よりも他人が着けている格好良さに惹かれることの方が強く出る。SNSの画像などひどく格好良く見えるのだ。もう手元にはパネライは1本も無いが、今でもパネライは好きだ。大きいのに重いのに邪魔にならず苦にならず良い具合に主張している。ビジネスシーンには合わないのはわかっているし、使いどころを間違えることも無いだろう。次回もし買うことがあるのならば更に大きい47mmに挑戦しても良いくらいだ。その時にこの貧弱な身体が更にヨボヨボになってしまわないうちに行動しないとな。シルベスター・スタローンの様なムキムキのお爺さんであれば何歳でも似合うと思うが70歳でパネライが似合うのはなかなかハードルが高い。
もう1つの未来を考えないことはない。パネライに手を出さなかった未来だ。まぁそんなことを言い出したらキリがないのだ。ビンテージウォッチがもっと安かった時になぜ選ばなかったのか?とか時計ファンなら誰もが考えることだろう。このルミノールマリーナ PAM00115を購入してから次の時計を買うまでかなりの年数が必要になる。時計趣味の空白期間だ。突然興味が薄れる。長いこと趣味を続けているとそんなタイミングがしばしば誰にでも起こるだろう。他に夢中になるものに出会ったり仕事や家庭が多忙となり時間が取れなくなったりすることも要因の一つになるかも知れない。もう一つは資金的な問題だ。腕時計はおいそれと買えるものではない。とは言え、他の趣味もあったしパネライで満足していたので特に悲しい思いをすることも無かった。インスタグラムが世に出てくるまでは。
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