LVMHのスマートウォッチは失敗だったと思う

LVMHのスマートウォッチは失敗だったと思う
最初に断っておきますね。
これはLVMHが赤字だったとか、事業撤退するとか、そういう話ではありません。
もっと単純な話で、
私は街で見たことがないのです。
タグ・ホイヤー のコネクテッド。ウブロ のビッグ・バン e。そして、ルイ・ヴィトン タンブール ホライゾンを着けてる方を。
皆さんは見たことがありますか?
私はありません。
腕時計が好きなので他人様の腕はついつい見てしまいます。
スーパーでもショッピングモールでも、駅でも電車の中でも。
皆さんはどうですか?空港、海外旅行、仕事先。
色々な場所で腕時計を見ちゃいますよね?
Apple Watchは嫌というほど毎日のように見ます。
G-SHOCKも見ます。
ロレックスも見ます。電波ソーラーのドメブラモデルもよく見ます。あテッサ、アストロン、オシアナス。
よく見るクォーツなら最近はムーンスウォッチも本当に増えました。
「あ、またムーンスウォッチだ。」そんな日も珍しくありません。来日客の皆さんがよく着けているのを見かけます。男性でも女性でも。
しかし、LVMHグループのスマートウォッチだけは見ない。
SNSでも見ない。
腕時計系インフルエンサーも着けていない。本当に見ない。
だから、私は失敗だったと思っています。
売れたかどうかではないのです。
「いや、何万本か売れたでしょう?」
そう言われるかもしれません。
もちろん売れています。
タグ・ホイヤーほどのブランドです。
熱心なファンもいます。
しかし問題はそこではありません。
腕時計は売ることがゴールではありません。
着けられて初めて腕時計なんです。
街で見かけたり、SNSで見かけたり、
「あ、それ何ですか?」と聞かれたり、
それが腕時計文化です。
ロレックスが人気なのは広告を見たからではありません。
誰かが腕に着けているからです。
Apple Watchも同じです。
街中が広告塔になっています。
ところがコネクテッドは違いました。
「アレいいな。」
と思う機会が圧倒的に少ない。
存在感がありません。

当時は私もちょっと期待しました。
2015年。
Apple Watchが登場したばかり。
腕時計業界も「スマートウォッチ時代」が来ると考えていました。
腕時計メディアも盛り上げました。
私も「もしかしたら成功するかもしれない」とちょっとだけ思っていました。

タグ・ホイヤーは本気でした。
Googleと組み、Android Wearを採用し、さらには機械式時計への買い替えプログラムまで用意しました。
「スマートウォッチを買っても無駄になりません。」
そんなメッセージだったのでしょう。
でも、そこで一つ大事なことを見落としていた気がします。
誰と戦っていたのか
タグ・ホイヤーはApple Watchと戦っていた。
そう思っていました。
でも違いました。
Appleは腕時計を売っている会社ではありません。
Appleは生活を売っています。
通知。
決済。
健康管理。
睡眠。
音楽。
ナビ。
スマートホーム。
Apple Watchはその入口に過ぎません。
つまり時計メーカーが戦っていた相手は時計ではなく、巨大なITエコシステムだったのです。
これでは最初から勝負になっていません。
20万円のスマートウォッチ、ここが一番難しい。
20万円。
30万円。
その価格でスマートウォッチを買う人は何を求めるのでしょう。
機械式時計なら30年、50年と使えます。
親から子へ受け継ぐこともできます。
でもスマートウォッチは数年です。
バッテリーは劣化します。
OSサポートも終わります。
スマートフォンと同じ運命です。
つまり高級時計の価格でスマートフォンを買っているようなもの。
時計好きほど、この違和感を拭えなかったのではないでしょうか。
ムーンスウォッチは真逆でした。

ここでムーンスウォッチを思い出してください。
発売日には行列。
SNSでもよく見かけました。
転売なんかも話題になりました。
そして今でも街で見かけます。
なぜでしょう。
理由は簡単です。
着けている人がいるからです。
高級ではありません。
資産価値もありません。
でも腕に着けたくなる。
人は人が着けている腕時計を見て欲しくなります。
これは100年前から変わりません。

LVMHのスマートウォッチには、それがありませんでした。
こうなれば良いな。

私は考えた、こうなれば良いな、こうなればもっと時計好きのみなさんも買うんじゃないかと。ラグジュアリーなスマートウォッチの完成形。
ガンダムのコアファイターみたいにモジュールを共通化するんです。
腕時計メーカーは「時計」側を作ればいい。
IT企業は「中身」モジュールを作ればいい。
私は今でもそう思っています。
ケースはカルティエ。
ケースはオメガ。
ケースはタグ・ホイヤー。
中身だけApple。
中身だけGoogle。
セレブは金無垢のパシャにアップルウォッチのモジュールをセットしてドレスを着れるんです。
5年後、OSが古くなった中身。
モジュールだけを交換。
ケースは一生物。
ブレスレットも一生物。
モジュールの外装規格を変えないから、どの年代の時計にもセットできる。
腕時計メーカーは時計作りに集中できる。
IT企業はソフトウェア開発に集中できる。
モジュールは数万円、時計本体は100万円でも売れるでしょう。
理想論なのは分かっています。
きっと何年も前にリシュモンもスウォッチグループもLVMHも考えたはずです。
それでも実現しない。
そこには私が知らない巨大な壁があるのでしょうね。
失敗だったから意味があった?

私はLVMHを笑うつもりはありません。
むしろ挑戦したことは評価しています。
もし誰も挑戦しなければ、高級時計メーカーとIT企業は交わることすらなかったでしょう。
ただ結果として市場は答えを出しました。
人々が選んだのはApple Watchでした。
そして時計好きは今もロレックスやオメガを買っています。
中途半端な存在になってしまったのが、LVMHのスマートウォッチだったのです。
でも私は、この挑戦はまだ終わっていないと思っています。
また、AIがもっと進化し、スマートウォッチという形そのものが変わる日が来るかもしれません。
その時、高級時計メーカーはもう一度挑戦するのでしょうか。
それとも、「時計は時計でいい」という結論にたどり着くのでしょうか。
スマートウォッチが「ウォッチ」の姿を捨ててしまえば、もう競争も無くなります。
いずれスマートレンズ、リング型決済が主流になりスマートウォッチは廃れるでしょう。
それでも機械式腕時計はそのままで時を刻み続けてるはずです。
10年後に答え合わせをするのが、今から少し楽しみですね。
それではまた!
【レビュー】タグホイヤー SBF8A8014.11FT6081 コネクテッド モジュラー 45mm Androidスマートウォッチ
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