【シリコン革命】腕時計と超磁気社会 ~磁気帯びにならないために~

OMEGA
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Watches and ultra-magnetic society

携帯電話は今や生活に切り離せないアイテムとなりました。

第5世代移動通信システム(5G)も開始され、最新のiPhoneも対応しています。

そんなiPhone12にはMagSafe(ワイヤレス充電)機能が対応されていますが、強力な「磁石」の力なんですね。

そうです、磁石なんです。

腕時計を着けている左手で電話を長時間していたら悪い影響があるかも知れないですね・・・

なぜなら腕時計は磁気に弱く、修理に持ち込まれる大半が「磁気帯び」だと言われています。

金属パーツでムーブメントを構築しますので仕方がありませんが、パイロットやレントゲン技師でもない一般人の周囲にここまで強力な磁気が発生するとは昔の時計師たちには考えられなかったのでしょうね。

パイロットウォッチには軟鉄性インナーカバーがセットされムーブメントを保護したりと工夫はあるもののシースルーバックには出来ない、ケース厚が増すなどのデメリットがあります(デイト表示も無いとか)。

そこで各社は研究開発の結果「磁気帯びしない(しにくい)素材」にいきつきました。

2005 ブルー パラクロム・ヘアスプリング

2005年 ブルー パラクロム・ヘアスプリング

ロレックスは、5年に及ぶ研究を経てブルーのパラクロム・ヘアスプリングを開発。常磁性合金を使用し、磁力に対する強度と、標準の10倍もの耐衝撃性を実現した。歴史的に、このヘアスプリングの独特のブルーは、極上の精度を誇るタイムピースにのみ許されるステータスシンボルと見なされている。 <ROLEX HPより>

ロレックスは「常磁性合金」を採用しました。

wikipediaで常磁性を検索しますと「常磁性とは、外部磁場が無いときには磁化を持たず、磁場を印加するとその方向に弱く磁化する磁性を指す。」とあります。

磁気が無い時は普通の金属、磁気がある時は磁化し、磁気の影響を受けない素材という事ですね。

超耐磁性を誇るミルガウスは更に磁気シールドを有しています。

2008 シリコン“Si14”製のフリースプラングテンプ

2008年 シリコン“Si14”製のフリースプラングテンプ

フリースプラングテンプは緩急針での調整をしないテンプですね。

その素材が“Si14”と名付けられたシリコン製という事です。

シリコンは合成樹脂ですので金属の様に磁気の影響は受けません。

生成も金属より簡単と言うメリットもありますが、セイコーミュージアムにこんな文言があります。

「シリコン素材を、ひげゼンマイのみならず、ガンギ車やアンクルに使うメーカーが増えていますが、これもシリコンが平滑面を持ち硬くて軽いので、摩擦による精度誤差が減ると同時に、注油の頻度を減らすことができるからです。調速脱進機が帯磁すると精度が狂うだけでなく止まってしまうことがありますが、シリコン素材は帯磁しないことも特長です。さらに、シリコン部品は複雑な形でも量産でき、製造精度が高い強みがあります。
シリコンは固い一方で衝撃を受けると脆い一面があるため、セイコーでは採用していません。その代わりに、ひげゼンマイにはセイコー独自のコエリンバー系の合金SPRON610が使われています。」

デメリットは衝撃に弱いという点ですね。

ロレックスが使用しなかった理由も同じなのかも知れません。

 

パテック・フィリップもフリースプラングテンプ式のジャイロマックステンプを採用しています。

高級腕時計はフリースプラングテンプが当たり前なんですね。

Silinvar(シリシウム/シリコン)製のSpiromaxスピロマックス髭ぜんまいや、Pulsomaxパルソマックス脱進機(ガンギ車とアンクル)など耐磁性にも特化したムーブメントを製造しています。

ただ全てのモデルに搭載されているわけではありません。

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グランドセイコーは上のオメガのところでも触れましたが、ひげゼンマイに使用するコエリンバー系の合金スプロン610は10,000A/mの耐磁性を有しています。

全ての機械式グランドセイコーは耐磁性があるという事ですね。

 

「シリコン革命」

最近気に入ってる中国の腕時計フォーラム。

こちらの英国に住む中国人技術者さん(1993年生)が記載された内容が参考になりますので、google翻訳の力をお借りして転載いたします。

「ロレックスとグランドセイコーが強力である理由の部族学的観点についての記事をGS板で公開しましたが、私が以前言及しなかったもう1つのこと、それはシリコンについてです(または新しい耐磁性ヘアスプリング)この材料の重要性について今回は書いていきます。」

「なぜシリコン素材を使う必要があるのか​​というと、腕時計好きなら知っていると思います。
ここでは主に業界の未公開情報についてお話しますが、時計製造業界ではなくITと純粋なAIの研究開発に切り替えたので、利害論争の問題はありません。

1つ目はメンテナンスの問題です。
現在、基本的にすべての時計工場はCADソフトウェア+ CNC工作機械製造+手作業による組み立てで作られています。
有名な大型時計工場では、明らかなメンテナンスの問題はないと言えます(もちろん、同じブランドのムーブメントが単純であるほど、サイズが大きくなるほど、修理しやすくなります)。
リシュモントグループ傘下のブランドの場合、マーケット運営部門から返送されたデータに基づく非保守修理の原因となったデータの78%は、磁気コアの動きに起因する多くの派生的な問題が原因であり、残りの割合は衝突による一連の問題や水の浸透に関する一連の問題もあり、ムーブメント自体の欠陥による修理は5%未満です(主にこれらの5%は、超薄型、超複雑、トゥールビョンのムーブメントです。)。
ムーブメントが磁化されると、精度が低下するだけでなく、エスケープメントとギアトレインも損傷します。
磁気によるムーブメントの損傷の程度は、1.バランススプリング 2.エスケープメント変形 3.スプリントとヘアです。
3は1と2よりもはるかに小さな影響があります。

2番目の問題は技術開発の問題です。
科学技術の発展、特に4Gと5Gの出現後に増加した製品により、私たちは私たちの生活の中でますます多くの磁場にさらされています。
新しいIPhone12はその一例です。
しかし、多くの人が知らないのは、市販のデガウサーは一時的に問題を解決できますが、磁気を受け取るたびに、合金ヘアスプリングの磁化部分の材料が電気移動の問題を引き起こすということです。
部品本来の特性が大幅に低下し、金属疲労の可能性があります(ヘアスプリングなどの金属疲労部品が廃棄されると)。
ただし、主要部品にシリコン材料を使用すると、磁化の可能性が大幅に低下し、磁化後に消磁します。
ダメージはありません(シリコンヘアスプリングは全く磁気がないのでダメージはありませんが、消磁後にスプリントを電気遊走しても効果はありません)

科学技術の発展とともにますます大きくなるこの種の磁場の問題を以前に分析しましたが、過去のデータとシミュレーションデータを使用して、10〜15年以内に既存の非特殊なヘアスプリング材料(約4500〜5000ミリアンペアの抗磁性力)が推定される通常の生活では永久に磁化されます(基本的に、昨日消磁し、今日再び磁化されました)。
つまり、既存のISO 764、DIN 8309仕様は、ずっと前にアップグレードされているはずです。」

今後10~15年後の社会は常に磁気にさらされる可能性が高く、シリコン製のヘアスプリングが必要だと言っています。

彼はリシュモンの元技術者さんと言う肩書。

オメガやパテック・フィリップの様なシリコン製が今後優位に立つのか、ロレックスやグランドセイコーの様な別の角度の耐磁性ムーブメントが優位に立つのか、彼の言う「常時磁化社会」が来た時に答えがわかるでしょう。

因みに彼は、今から買うのであればロレックスやグランドセイコーではなく、オメガを勧めています(キャリバー8800/8900)。

 

それではまた!

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